【ソウルフルメドレーズ】 藤たまき
私が「月刊マガジンビーボーイ」を読み始めて、本当に大好きになった「藤たまき」先生の短編集。
表題作の「ソウルフルメドレーズ」は主人公は小さくて可愛い「六実」だが、当時の私はクールできれいな双子の弟「翠」に夢中になる。
この蒼と翠の双子が良いのだ。
チューもやらかして、「何でこの双子がくっつかないんだ!」とヤキモキした。
「蒼」と「翠」はもちろんそんな気はないかもしれないが、二人の愛にキュンキュンした作品だった。
私はこの短編集のなかでとくに一番のお気に入りの作品がある。
「初恋」だ。
中学生の時に1度だけ同じクラスだった、というただの顔見知り程度の2人が乗ったボートが何千キロも流されて漂流する。
何日も海の上で2人きり。まあ・・・船の上でイチャイチャするわけですが、結局は救出された後に滅多に会うこともなくなります。
その数年後に話す機会があるのですが、その時の言葉が素敵なのです。
藤たまき作品の何が好きかっていうと「言葉」。
20年前のひとつひとつの短編のフレーズを今でも思い出すことがあるくらい素敵なのです。
漂流した彼らの再会が描かれているのはほんの数ページ。
それでも題名の「初恋」が切ないほど伝わってくる。
今でも読み返す私の中の名作です。
ちなみにこの作品を読んで、「ソルティドッグ」という存在を初めて知りました。
ソルティドッグを飲むたびに、「初恋」を思い出します。
これは藤たまき先生の初期の短編集。
今のBL漫画のように背景まで綿密に描かれたような漫画ではなく、絵柄はあっさりしています。
でもだからこそ「言葉」のひとつひとつが頭にしっかりと入ってくる。そして絵のあっさりさなんてどうでも良いと思えるくらいの美しい物語たち。
私が色々なBLを読んできて、描かれる言葉が美しいとはっきり言える数少ないBL作家さんの一人です。
読み返し度:5(5段階中)